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TFCC損傷(三角線維軟骨複合体損傷)
尺骨の手関節部分の突起の周囲にTFCC(三角繊維軟骨複合体)と呼ばれるハンモック状の組織があり、手根骨と尺骨の間にかかる負荷を均等にするクッションとしての作用と、遠位橈尺関節に安定性を与える作用がある。このTFCCが損傷を受け、手首に痛みが出る疾患をTFCC損傷という。TFCCを構成するものは、尺骨頭と尺側手根骨の間にある。
①尺骨手根半月
②関節円板
③尺骨三角骨靭帯
④尺骨月状骨靭帯
⑤掌側橈尺靭帯
⑥背側橈尺靭帯
⑦尺側側副靭帯
⑧背側橈骨三角骨靭帯
などの複合体のことで、日本語では三角線維軟骨複合体という。
■症状
尺骨頭と手根骨の間に圧痛、腫脹、発赤、熱感があり、回内、回外、尺屈時に手関節の尺側部に痛みを訴え、重いものを持ち上げる動作で痛みが出現する。安静時の痛みはみられないことが多い。重度の場合、遠位橈尺関節に不安定性が出現する。
尺屈回外テスト陽性。
検査で異常が出ないことが多く、ほとんどの場合はレントゲンに問題はない。MRI、関節造影検査が確定診断となるが、MRIはTFCC自体がそれほど大きなものでない上にMRIのスライス幅の限界が2~3mm程度のため、スライスによっては判断できない。関節造影検査では、損傷部で造影剤の漏れを認めることができる。
■原因
TFCC損傷は手を突いて倒れたり、手が過度に回内されて受傷することが多い。野球やテニスをしている人に多く起こる。また、加齢変性に伴い損傷することもある。稀に、尺骨の相対長が橈骨よりも長い例で発生することがあるが、同じ長さおよび尺骨が短い例でも生じる。尺骨が長い場合は、「尺骨突き上げ症候群」といい、仕事や生活上で、手関節を小指側へ動かすことが多い人に発生しやすい。
■治療
ほとんどが保存治療で回復できる。外傷性のものには3~4週間の外固定を行い、局所の安静を保つが、症状の強さによって固定の期間は異なってくる。しかし、固定は長くても三ヶ月が限度である。この時期は負担のかかるスポーツや作業は避けた方が望ましい。
慢性的な使いすぎ、変性によるものには、付け外しが簡単な装具を装着したりし、スポーツなどを行うときはある程度手首の自由がきくテーピングで固定する。温熱療法や運動療法も効果的である。
まれに保存療法でも改善されない場合は関節鏡下での手術を行い、尺骨突き上げ症候群の場合は、尺骨短縮術等の手術を行う。