症例
むくみ(浮腫)
むくみ(浮腫)とは 細胞と細胞の間にある水分量が増加した状態のこと
身体のおよそ6割は水分で、その3分の2は細胞内(細胞内液)に、3分の1は細胞外(細胞外液)にある。
細胞外液は、血液に含まれる水分(血漿やリンパ液)と、細胞と細胞の間(細胞間隙)を埋めている水分(間質液)に分かれる。これらの水分は細胞や血管などを行き来して、細胞に栄養を送り、老廃物を除去しているが、基本的には体内の水分の配分が変わることはない。
しかし、配分のバランスが崩れ、細胞間隙に水分が溜まってしまう状態のことを浮腫みと言い、浮腫みは血管から細胞間隙へ流れ出る水分が多くなる、血管やリンパ管へ吸収される水分が減ってしまうなどの理由で起こる。
■浮腫みと肥満、腫れの違い
浮腫み(甲状腺機能低下症、クインケ浮腫以外の疾患)では指で強く押すと跡がくっきりと残るのが特徴で、肥満と腫れにはみられない。
腫れでは痛みを伴うが、浮腫みと肥満は痛みを伴わない。
■分類
◎全身性浮腫
・腎疾患 (ネフローゼ、急性腎炎)・・・尿中に蛋白が出ていき低蛋白血症により血管外に水と塩分が漏れて浮腫む 体重の増加、だるさ、尿が泡立つ、初期はまぶたや下肢の浮腫みがでやすい。
・うっ血性心不全・・・血液のポンプ作用をする心臓の機能低下で肺や全身に血液を送れず体内に貯留する 圧痕性浮腫、易疲労感や呼吸困難を伴う、不整脈、腹水がみられることもある。
・肝硬変・・・肝臓の慢性炎症により肝細胞が壊死と再生を繰り返し肝細胞が固くなり働きが落ちて血流が悪くなる 圧痕性浮腫、体の倦怠感、血が止まりにくい、腹水、ひどい場合は黄疸もみられる。
・甲状腺機能低下症・・・血中の甲状腺ホルモンが不足し、全身の代謝機能が落ちることによる 非圧痕性浮腫(粘液水腫)、皮膚が乾燥、 食欲ないが体重増加、無気力、寒がりがみられる。
・薬剤性浮腫・・・薬の副作用でおこる浮腫、Ca拮抗薬の末梢動脈における血管拡張作用が静脈での作用に比べて強いため細動脈の拡張に細静脈の拡張が伴わず、細静脈が拡張することなく細動脈が拡張し、毛細血管圧が上昇するため 圧痕性浮腫、動悸、頭痛、ほてり感なども現れることがある。(NSAID、ADH、降圧薬、甘草、血糖降下薬)
・栄養障害性浮腫・・・極度の栄養障害により血中のタンパク質の一種アルブミンが低下し血管の中の水分を保持する力が落ちてしまい、血管外の組織間に水が漏出し、浮腫となる。圧痕性浮腫
・特発性浮腫・・・原因が不明だが、利尿剤や下剤の乱用、極度な食生活の乱れによって生じる可能性があると考えられている。
圧痕性浮腫、夕方に悪化しやすい、20~40歳代女性に多い、特に下肢に現れやすく立位により増悪、朝に比べ夕方の体重が1,5~2㎏増加することもある。頭痛、めまい、四肢の冷感などの不定愁訴が多い傾向にある。
◎局所性浮腫
・慢性下肢浮腫・・・病気によるものでなく座位や立位など長時間同じ姿勢が続く、すり足や小刻み歩行など筋肉を十分に動かせていない歩き方など日々の生活習慣により発症。 圧痕性浮腫、高齢者に多い、重症化すると足が重く感じ痛みで自力での歩行が困難になり皮膚潰瘍(皮膚がえぐれ水が出てくる状態)になることもある。
・静脈性浮腫(下肢静脈瘤、深部静脈血栓症など)・・・上・下大静脈症候群、四肢静脈血栓症、静脈瘤
・リンパ浮腫
一次性・・・若い人に多く、左側が浮腫むことが多い
《先天性》生まれつき、2歳~3歳に発症する。
《早発性》35歳以前に発症、一次性のほとんどを占める。
《遅発性》35歳以後に発症
二次性・・・リンパ浮腫のほとんどが二次性、健側と比べ白く浮腫むのが特徴 乳癌や婦人科系癌の手術後に発症することが多い
・血管性浮腫(クインケ浮腫)・・・非圧痕性浮腫、非対称性(顔を除く)眼瞼、口唇、喉頭や消化管などの柔らかい所にでる、重力に関係のない場所にでる。数時間で発生し、3日ほどで消失するのが特徴。
・炎症性浮腫・・・片側の下肢の炎症性疾患、アレルギー性疾患、外傷、関節、筋骨疾患など 非圧痕性浮腫、アレルギーや炎症性のもので発赤、熱感、圧痛が伴う。
■原因
・立ち仕事やデスクワークなどで同じ姿勢をとり続けていた場合、全身の血行が悪くなり、血管から水分が多く流れ出してしまうため。
さらに重力の影響で身体に不要な水分が下半身にたまってしまう。
・コルセットやきつい下着の着用も血管が狭まり血行が妨げられ、血流がスムーズにいかずに足がむくみやすくなる。
・女性は月経前や更年期など女性ホルモンの影響でもむくみやすくなる。黄体ホルモンが増えると血管が拡張されるため。
・服薬の影響 降圧剤等の降圧剤などの副作用。他にも手足のほてり、動悸、頭痛などもみられる。
・水分や塩分の取り過ぎ 水分や塩分(摂取すると水分を多く取り込む性質があるナトリウムとなって体内へ運ばれる)を促進する血管内の水分量が多くなり、静水圧が上昇するため。
・アルコールの飲み過ぎ アルコールには血管内脱水の作用があるため体内の水分が失われ血液濃度が上昇するのを回避しようと血管内に水分を取り込もうとするため。
・過度なダイエット 筋力低下やビタミン不足などで体内の水分調節が乱れるため。
・睡眠不足 血液のポンプとなる心臓や体内の水分調節を行う腎臓などの内臓の働きが落ちることによりみられる。
■特徴
浮腫みやすい条件
女性 高齢者 運動不足 太っている 夕方 低気圧
浮腫みにくい条件
男性 若年者 運動量が多い 痩せている 朝 高気圧
《改善方法》
・マッサージでほぐす
・お風呂などでよく暖める
・寝た状態で心臓よりも5cm~10cm程度足を高くあげる
・一定の姿勢をとらないでこまめに体を動かす
・顔のむくみには冷水・温水で交互に顔を洗うなど血行を改善する
・運動をして筋肉、基礎代謝を上げる
有痛性三角骨障害
足関節後方インピンジメント症候群、距骨後突起障害、距骨後部圧迫症候群と言われている痛みの一つ。
過剰骨と呼ばれる余分な骨の1つである三角骨が原因の痛み。
三角骨は外脛骨に次ぐ2番目に多い過剰骨(副骨)であり、5%~10%の人が産まれたときから三角骨があると言われている。
また、クラシックバレエ、ダンスやサッカー、空手などつま先立ちになったり、つま先立ちでさらに片足だけに体重を乗せたりするように負荷を連続して行うことにより、 距骨のうしろに突起している骨の先端が骨折(Shephard’s fracture)し、分離してしまう状態になり この分離した骨を三角骨ということもある。
通常は三角骨があっても痛みなどはなく、無症状であることが多い。
この三角骨や骨の突起が足の関節部分で挟まり、炎症をおこし、痛みが生じる。
■症状
足首の後ろが痛くて、つま先立ちがうまくできない。ボールをけったり、つま先立ちをする姿勢を長時間すると、つま先立ちになった時に痛む。
完全につま先が伸びきらない。
足関節後面に圧痛がある。
足関節底屈テスト(足関節を他動で底屈を加える)陽性
足関節後面の奥の方が痛いと感じる。
アキレス腱炎との鑑別が重要。
長母趾屈筋腱炎を併発することが多い。
■治療
テーピングで痛みの出る動きを制限する。手術で三角骨を除去する。
アキレス腱炎・アキレス腱周囲炎
X線検査でははっきりと診断がつかないことも多い。
MRIをとると腱がふくらんでいるのがよくわかり、変性の程度などの詳細な診断が可能。また、超音波検査も簡便で有効な方法である。
アキレス腱炎
アキレス腱炎は使いすぎによるオーバーユース症候群のひとつで、スポーツ障害としては頻度の高い。繰り返しのストレスによりアキレス腱に微細な部分断裂や瘢痕化が生じており、腱の変性が認められる。
■症状
かかとへの付着部から上方2〜6cm部分のアキレス腱が腫脹し、押さえると痛みが増強する。運動した後や朝起きた時の歩き始めに痛みが強く、症状が進行すれば安静にしていても痛いことがある。足関節を背屈することで疼痛が増強する。
アキレス腱周囲炎
アキレス腱はパラテノンという薄い膜でおおわれているが、この部分に炎症を生じた場合をアキレス腱周囲炎という。 アキレス腱全体が腫れてしまった場合を「アキレス腱周囲炎」ということもある。
■症状
進行すれば足関節の動きが悪くなり、足関節を動かすとアキレス腱にきしむような摩擦音が聞こえることがある。
■治療
保存治療が原則で、痛みが強い時には運動を控えて局所を安静に保つ。湿布や一時的な消炎鎮痛薬の内服も有効。
少しヒールのある靴を履いてかかとを上げると、アキレス腱の緊張が軽減され疼痛が改善する。また、扁平足などの足部変形がある場合には、足底挿板を処方することによりアキレス腱への負荷が軽くなる。
スポーツ選手への局所注射は、腱の変性や断裂を生じる場合があり、慎重を要す。慢性期で再発を繰り返す場合には、手術的にアキレス腱を再建する方法があるが、適応になるのはごくまれ。
症状の改善が認められれば徐々にスポーツを始め、運動前のストレッチングや運動後のアイシングを励行するようにする。
保存治療が原則で、痛みが強い時には運動を控えて局所を安静に保つ。湿布や一時的な消炎鎮痛薬の内服も有効。
少しヒールのある靴を履いてかかとを上げると、アキレス腱の緊張が軽減され疼痛が改善する。また、扁平足などの足部変形がある場合には、足底挿板を処方することによりアキレス腱への負荷が軽くなる。
スポーツ選手への局所注射は、腱の変性や断裂を生じる場合があり、慎重を要する。慢性期で再発を繰り返す場合には、手術的にアキレス腱を再建する方法がありますが、適応になるのはごくまれ。
症状の改善が認められれば徐々にスポーツを始め、運動前のストレッチングや運動後のアイシングを励行するようにする。
大腿骨頚部骨折
骨粗鬆症の高齢者に多く、特に女性に多い。女性は男性より約3倍多いと言われている。骨折の95%は転倒により起こる。
高齢者の骨折のなかでは最も頻度の高いものである。
内側型と外側型と二種類あり、内側骨折・外側骨折に関わらず、頚体角の増減によって、内転型と外転型を分けられる。
■症状
股関節部に強い痛み、腫張、歩行不能。痴呆症状のある方や咬合骨折や不完全骨折の場合は歩けることもある。
膝関節伸展位での下肢拳上が不可能になる。典型的に下肢(足)は、外旋位をとり、大転子の上方転位によって患肢の短縮を認める。大転子部の叩打痛。股関節部に異常音がすることもある。
アンピルテスト陽性
●大腿骨頚部内側骨折
内側骨折の場合、関節包内骨折のため腫脹が著名ではない。内出血が少ない。
少し足を捻ったぐらいでも発生する。骨癒合がしにくく、偽関節や大腿骨頭壊死を起こしやすい。
理由は
- 骨頭の血流は、主に大腿骨頭部から入ってくるために、骨折により血管が損傷され骨頭側の血流が阻害されてしまう。
- 関節包内の骨折で骨折部に骨膜が存在せず、骨膜性化骨を形成できないため。
- 骨折線の方向により骨折部に対して剪刀力が働く。
- 高齢者に多発する骨折のため骨形成能が落ちている。
ガーデンの分類
- STAGE1:不全骨折(楔合外転型骨折も含む)保存療法可能。
- STAGE2:完全骨折で転移のないもの。保存療法可能。
- STAGE3:完全骨折で部分的転移(経度の転移)を伴う。
骨接合術または、人工骨頭置換術。 - STAGE4:完全骨折で完全転移(高度の転移)を伴う。 人工骨頭置換術。
●大腿骨頚部外側骨折
明らかな転倒、転落で発生する。内出血が多くみられる。痛み、腫脹が著名。
関節包外の骨折なので血流がよく、骨癒合しやすい。
- エバンス分類
安定型と不安定型とに分類。
- 内転型骨折
頚部内側骨折のほとんどが内転型骨折である。
頚体角減少=大転子高位=下肢の短縮。内反股になる。
- 外転型骨折
頚部内側骨折の外転型骨折は比較的少なく、噛合している場合がほとんどである。噛合している場合、骨性癒合を望めるので、オペしなくてもよい。
頚体角増大=大転子低位=下肢の延長。外反股になる。
●合併症
- 大腿骨骨頭壊死
- 偽関節
- 遷延治癒
- 沈下性肺炎
- 老人性痴呆
- 褥瘡
- 静脈血栓塞栓症
■治療
- できるだけ早期に歩行できるようにすることが重要。
- ひびだけの場合や他の病気で体の状態が悪く手術が不可能な場合を除いて、ほとんどの場合は手術による固定が必要。
単純性股関節炎
子供の股関節痛をきたす疾患で多く見られる。4~12歳ぐらい(6・7歳がピーク)の男の子にやや多く見られる。
■症状
最初は膝を痛がったり、大腿を痛がることもあるが、急に片方の股関節が痛くなり、歩行時に跛行(足を引きずる)がみられる。
股関節に運動制限がみられ、股関節を広げた、ガニマタの形になり、動かすと痛がる。軽く曲げた姿勢が楽。
パトリックテスト陽性 スカルパ三角部に圧痛がある。
レントゲンでの異常はない。
超音波画像では関節に水が溜まっていることが確認できる。
熱はなく、あっても微熱程度。
■原因
急怪我などの外傷がなく、原因は不明。風邪を引いた後に発症しやすいことから、自然な免疫反応ではないかといわれている。
■治療
安静が基本。予後は良好。1週間から2週間ぐらいで自然に痛みが消失する。「化膿性股関節炎」や「ペルテス病」と鑑別をする必要がある。
歩行不能、軽度の運動で痛みある際には重症と考え入院させて牽引し絶対安静とすることもある。