症例
オスグット・シュラッテル病
成長期(特に10歳~15歳)のスポーツをしている少年少女におこりやすい膝下にある脛骨粗面の痛み。
比較的男子に多い。
膝の代表的な骨端症。骨端症を成長痛の一つとみるか別とみるか意見が分かれている。
オスグッド・シュラッター病、オスグッド・シュラッター症候群、オスグッド病とも言われる。
大腿四頭筋の筋力に引っ張られ、脛骨粗面が変形し突出してくる。ひどければ骨が剥離して骨片(オシクル)がみられる。
サッカー、バスケット、バレーボールなどの跳躍をするスポーツに多い。
■症状
脛骨粗面部の痛み (正座時の痛み、走行時、歩行時の痛みひどくなると安静時でも痛くなる)
患部の突出変形、腫れ、熱感
脛骨粗面部の限局した圧痛
一ヶ月ほどの安静が出来れば、症状が治まることが多いが、運動を再開すると再発をくり返す。
ほとんどの場合は小学生高学年から中学生の期間で起こり、高校生(16歳~18歳)になると骨の成長が止まるので症状が治まることが多い。
■原因
膝伸展機構は大腿四頭筋から膝蓋骨、膝蓋靭帯・膝蓋腱、脛骨粗面へと連続する。スポーツ選手では膝伸展の反復により、これらの部分に牽引力が働き、脛骨粗面が弱点となり、疼痛が起こる。
10歳~15歳の骨は成長の過程で柔らかい骨から硬い骨へと変わっていくが、 その間の骨はやや不安定な状態になり、運動などの刺激によって異常が生じるものと考えられている。
こうした不安定な状態は、骨の成長スピードに膝周辺の筋肉や腱の成長が追いつかず、アンバランスな筋骨格構造になることが主な要因で、こうした状態に過剰な運動による負荷が加わることで症状が現れる。
■治療
安静が第一。キックやジャンプの動作は禁止となる。
温熱療法、大腿四頭筋のストレッチングや筋力強化訓練などのリハビリが効果ある。
大きな骨片が存在する場合には手術的に摘出することもある。
時期が来れば痛みは消えると言われているが、実際はスポーツなどは完全に中止し、休養をとらないと完治は難しい。
タナ障害(滑膜ヒダ障害)
■症状
膝蓋骨の内側に引っかかるような感じがあり、膝を動かすときに痛みがある。
膝の屈伸でコリッと音がする。
膝蓋骨の内側のやや下方に索状物と圧痛が認められる。思春期から青年期に多い。
■原因
胎生期に関節を覆う袋(関節包)が造られていく過程で一時的にできる「滑膜ひだ」が、遺残としてその後も存在する状態で、膝関節の関節包の内側にもともと約50%の人に「滑膜ひだ」が存在する。
このひだが関節に挟み込まれて炎症をおこし痛みを生じる。
■治療
- 大腿四頭筋の強化とストレッチ。
- ひどい場合は、稀に関節鏡視下で手術する。
- 膝を温める。
変形性膝関節症(膝OA)
■症状
膝関節の痛みと腫脹(滑膜の肥厚による)。膝の内側に多い。
膝蓋上方に水腫が溜まる。
関節軟骨が磨り減り関節の隙間は狭くなり、膝関節の骨の変性が始まり骨棘ができる。
膝の内側裂隙に圧痛がある。高齢者の女性に多い。
Kellgren-Lawrence分類
グレード0:正常
グレード1:関節裂隙狭小化の疑い。軽度の骨棘形成
グレード2:骨棘形成と軽度の関節裂隙狭小化
グレード3:中等度,複数の骨棘形成,関節裂隙狭小化,軟骨下骨硬化
グレード4:大きな骨棘形成,高度の関節裂隙狭小化,高度の軟骨下骨硬化
症状においての分類
- 初期:動作開始時痛。
- 中期:歩行時や階段の上り下りで痛む。
- 末期:夜間痛、膝関節の可動域制限、軋轢音がある。
■原因
- 老化や体重による関節軟骨の変性。
- ヒアルロン酸(関節包の中で潤滑液として働き、軟骨の栄養分)の減少。
- 半月板損傷や膝の手術後の二次性変形性膝関節症。
- 遺伝的要因。
- O脚等の足の変形。
■予防
- 大腿四頭筋を鍛える。
- 正座を避ける。
- 体重を減らす。
- 温めて血行を良くする。
- 杖を突いたり、水泳をする。
- 痛みが強い場合は安静にし、痛みがひいてくれば痛みが出ない程度に徐々に運動を行う。