肩関節周囲炎(五十肩)(四十肩)
40代から50代の中高年に多い。男女差はない。
病態が明らかな肩関節疾患、外傷や神経・筋疾患などを除外して自動、他動
共に可動域制限を主徴とした肩の痛みの症候群。
痛みを堪えれば腕が上がる状態は、五十肩とは言わない。
■症状
夜間痛。
あらゆる方向で可動域制限(特に結帯動作、結髪動作で痛む)
肩甲上腕リズムの乱れ。 腕まで放散痛あり。
左右の肩に同時に発症することは少なく、ほとんどはどちらか一方の肩に
起こる。しかし、左右が時期をずらして発症するケースもよくある。
■原因
原因は不明。
使い過ぎや老化によって、肩関節周囲に肩峰下滑液包、腱板、関節包に炎症を起こす。また、関節包が癒着し、肩関節の動きが悪くなる。 (関節拘縮、又は凍結肩)
一説には、肩関節の癒着は疲労物質の蓄積が原因とされ、そのピークが50歳代に多い。20歳代や30歳代は疲労物質が蓄積されにくく、70歳代・80歳代は疲労物質の蓄積が減少するので、50歳前後に多いと言われている。
単純X線で異常が認められず、造影では関節包下部の縮小が認められる。
早くて3ヶ月、大部分は長くて1年位で治癒。時間はかかるが自然治癒する。
■分類
・急性期(2週~2ヶ月)
炎症が起こったばかりで激しく痛み運動制限がある状態。自発痛あり
対処法:安静
・慢性期(2ヶ月~4ヶ月)
炎症がおさまり、無理に動かすと痛む状態
対処法:アイロン体操=コットマン体操、壁押し体操、患部を温める
・回復期(4ヶ月~6ヶ月)
痛みはないが、腕を十分に動かせない状態
対処法:棒体操
■治療
- 慢性期以降は患部を温め適度な運動療法を行う。
- 少し痛みを感じる程度の運動。無理に動かすと炎症がひどくなる。
- 痛みをまったく感じない運動はあまり効果は望めないが、だからといって無理をするとかえって悪化したり、腱に弾力がなくなっているために断裂したりするので、少し痛い程度でとどめ、同じ運動を回数繰り返して行う。
骨化性筋炎
■症状
打撲した後の痛みが1か月以上残り、患部に圧痛、腫れがあり、膝関節の屈曲制限がある。
レントゲン、超音波画像で明確に分かる。
受傷後1週間程度ではレントゲン画像で骨形成が認めにくいため、受傷初期にはレントゲン診断は有効的でない場合がある。
本来は「骨」がない筋肉の中などに骨が出来ることを異所性骨化と言い、骨化性筋炎は筋肉中にできる異所性骨化のこと。
筋肉の炎症に引き続いてカルシウムが沈着し、石灰化現象が起こって筋組織の中に骨が形成される状態。
大腿部前面(特に中間広筋や外側広筋)に起こりやすく、この部分に強い打撃を受けた後によく見られる。
大腿四頭筋に起こる打撲をチャーリーホースとも言う。
■原因
骨化性筋炎は打撲に対する初期の処置が適切でなく、痛みを無視して筋肉を激しく使ってしまうことで起こる。この他にもしこりのある筋肉を強くもむようなマッサージ、痛みがある時点での無理なストレッチも骨化性筋炎の原因となる。
■治療
痛めて2~3日は、低周波などの電気治療やアイシングを行い、ひどい場合は固定をする。急性期の痛みが引いてきたら温熱療法などの理学療法を行う。
十分な休養が必要で、筋肉内にできた血腫がなくなるまで患部に打撃などの強いストレスが加わらないようにすることが重要。 筋肉内に発生した骨性組織の消失が確認されるまでの間、安静とすることが基本。
患部に負担のかかる運動は禁止する。受傷後6週でジョギングは可能となり、3カ月で完全復帰となる。
手術をして、骨化した部分を取ることはほとんどない。
顔面神経麻痺
顔面神経に支配されている片側の顔面筋が麻痺して動かなくなる状態。
男女差、年齢に関係なく、急性あるいは亜急性に発症する。
三叉神経痛と混同されることがあるが、痛みは伴わない。
中枢性か末梢性かを判断することが重要。
・中枢性顔面神経麻痺 脳腫瘍、脳梗塞等の合併症 顔面神経麻痺の5%
・末梢性顔面神経麻痺 ベル麻痺、ラムゼイハント症候群等 ほとんどの顔面神経麻痺
●ベル麻痺
60%~70%の顔面神経麻痺
完全回復86%、不全回復14%と言われている。
予後は良好で、発症してすぐに治療を開始すれば数ヶ月の間に90%以上治癒する。
■症状
1、 額にシワが寄せられない。中枢性はシワ寄せができる。
2、 目を閉じられない。涙の分泌も低下して目を涙で潤せないので、 ドライアイになる。
3、 口角が下がる。口角を外側に広げイーと言えない。
4、 口をとがらせて口笛がふけない。
5、 麻痺側の鼻唇溝が浅くなる。
6、 唾液の量が減る。
7、 麻痺側の耳が過敏になり、音が大きく響く。
8、 舌前方3分の2の味覚が障害される。
後遺症
・病的共同運動 (ある部分を動かそうとすると別の部分が一緒に動く)
・顔のこわばり
・ワニの涙 (食事の際に涙がでてくる)
・顔面のけいれん
■原因
原因は不明。
単純ヘルペスウィルス
寒冷暴露等によって顔面神経管で顔面神経が
腫れ、圧迫があると麻痺が起こると考えられている。
●ラムゼイハント症候群
10%~15%の顔面神経麻痺 完治率は60% ベル麻痺に比べて麻痺の程度が重症で後遺症も残りやすい。
■症状
麻痺の症状の前に片方の外耳道、耳介、口腔内に帯状疱疹ができることが
ある。耳鳴り、難聴、眩暈が合併していることがある。他、ベル麻痺と同じ症状。
■原因
水痘帯状疱疹ウィルス
■治療
早期治療の開始が重要。発症して2週間を過ぎると手遅れ。
副腎皮質ステロイド、ビタミンB12、抗ヘルペスウィルス薬等の投与。
顔面を冷やさない。血流を良くするために温める。
麻痺した筋肉をゆっくりとマッサージ。
(病的共同運動の発生するリスクを避けるため、発症後4か月以内はやらない。)
麻痺した筋肉を意識的に動かす。(バイオフィールドバック)
早期にはあまり強くやりすぎない。
低周波刺激のリハビリは後遺症(病的共同運動)が起こりやすくなると
言われている。