石灰沈着性腱板炎
■症状
夜間の突然の激痛から始まり、肩の関節拘縮に移行することが多い。
レントゲン又は超音波画像で、石灰を確認することができる。
石灰は、殆ど白血球の貪食作用によって自然に吸収され、無くなる。
40代~50代の女性に多い。
■原因
腱板(棘上筋、棘下筋)などに石灰(リン酸カルシウム結晶)が沈着して炎症を起こす。
この石灰は、最初はミルク状で次第に硬くなり、膨らんで腱板から滑液包内に破れ出ると激痛を伴う。
なぜ石灰が沈着するかは不明。
野球肘
投球動作の繰り返しによって肘関節に生じる疼痛性障害の総称。
繰り返しボールを投げることによって肘への負荷が過剰となることが原因。
肘の内側で靭帯、腱、軟骨が痛み(内側型野球肘)、肘の外側で骨同士がぶつかって、骨、軟骨が剥がれたり痛んだりする。(外側型野球肘)
また、肘の後方でも骨、軟骨が痛む。(後方型野球肘) があり、約90%以上が内側に起こる。
発生の時期では二種類あり
・発育型野球肘 : 成長途上の骨端を中心とする骨軟骨の障害
・成人型野球肘 : 成長完了後の関節軟骨や筋腱付着部の障害
に分けられる。
●内側型野球肘(上腕骨内側上顆炎)
■原因
投球動作では、加速期に腕が前方に振り出される際に肘に強い外反ストレスが働き、さらにその後のボールリリースからフォロースルー期には手首が背屈から掌屈に、前腕は回内するため、屈筋・回内筋の付着部である上腕骨内側上顆に牽引力が働く。この動作の繰り返しにより、内側側副靭帯損傷、回内・屈筋群筋筋膜炎、内側上顆骨端核障害や内側側副靭帯の牽引による剥離骨折などが起こる。
■症状
内側上顆部の疼痛、腫大、圧痛、軽度の肘伸展制限、硬結。
1度
痛み発生から約二週間、腫脹、圧痛は軽微で、抵抗下での手関節の自動的屈曲では疼痛が増強、X線上には変化がない。
2度
腫脹や圧痛が著明、手関節の他動的背屈または、抵抗下での自動的屈曲により疼痛増強、X線上に変化が見られるもの。
3度
腫脹はびまん性で患部は腫大し、圧痛は著明で運動制限を訴え、他動的運動、抵抗下での自動的屈曲は疼痛のため不能を認め、X線上に骨端軟骨層の拡大、関節遊離体(関節鼠)など明らかに変化を認める。
内側側副靭帯損傷では、投球時の肘関節内側痛、肘間節の内側に圧痛があり、外反ストレステストで陽性反応がでる。テークバックからの加速期に痛みが起こり、日常生活では痛みは無症状の事が殆どだが、重症例では日常生活の不安定性や痛みが出現し、不安定性により尺骨神経が傷害(肘部菅症候群)され、痺れや感覚障害を生じることもある。
●外側型野球肘(上腕骨小頭離断性骨軟骨炎)
■原因
小学校高学年から中学校低学年に初発することが多い、野球肘外側型障害の代表的なものであり、繰り返す投球動作における外反ストレスにより、上腕骨小頭の骨軟骨が変性、壊死を生じるもので、病名に「炎」とあるが実際には炎症性の疾患ではない。
投球動作の加速期における外反ストレスによって、腕橈関節と呼ばれる肘関節の外側に圧迫力が働き、さらにフォロースルー期で関節面に捻りの力も働く。このストレスの繰り返しにより生じるのが外側型野球肘であり、上腕骨小頭離断性骨軟骨炎、橈骨頭肥大、橈骨頭障害などがある。離断性骨軟骨炎には透亮期、分離期、遊離期に分類される。
■症状
上腕骨小頭部の圧痛。肘関節の運動時痛や可動域制限が主な症状で、症状が進行すると、病巣部の骨軟骨片が遊離して関節内遊離体(関節ねずみ)になり、引っ掛かり感やロッキングを来し、滑膜炎と呼ばれる関節内の炎症を起こすこともある。
透亮期:
X線上で骨の影が不鮮明になった状態、上腕骨小頭に壊死層が見られる。
投球時に肘の内側や外側が痛み、痛みの場所に圧痛がある。投球を休めば痛みはなくなる。
分離期:
壊死した骨と正常な骨に分離線が現れる。投球のたびに肘に痛みが出て肘の曲がりや伸びが悪くなる。手術をしなければならない。
遊離期:
壊死した骨が離れ、関節の中に落ちた状態。関節内に落ちた遊離体が、関節の間に挟まって突然肘が動かなくなり、強い痛みがでる。手術をしなければならない。
分離期、遊離期まで症状が進行すると、投球動作のスポーツが十分にできなくなるため、早期発見、早期治療が重要である。
●後方型野球肘
■原因
投球の加速期における外反ストレスと減速期からフォロースルー期にいたる肘関節伸展強制によって、上腕三頭筋の遠心性収縮により上腕三頭筋腱に炎症がおきる。肘頭は上腕骨の後方にある肘頭窩に衝突するようなストレスを受け、この動作の繰り返しにより、肘頭疲労骨折や骨棘形成、肘頭骨端線閉鎖遅延などが起こる。
■症状
肘後方の肘頭骨端線部に圧痛が見られ、加速期からフォロースルー期にかけて疼痛が みられる。肘の伸展制限がみられることが多い。
肘頭疲労骨折では、自発痛、圧痛著明、骨折部の痛み、限局性圧痛は著明である。
腫脹は骨折部中心にみられる。骨折部が離開を示す場合は、その裂隙部に横走する陥凹を指頭によって触知できる。骨片転移がある場合は、近位骨片が後上方に突出変形しているのが皮膚上から認められる。合併症として尺骨神経を障害する場合がある。
■予防・治療
予防としては投球数の制限および早期発見と、治療期間中の投球禁止が重要である。
少年野球における肘の障害は大きな問題であり、これらに対して連盟も取り組んでおり、変化球を投げた場合にはストライクとならない、またはプレーを無効としたり、試合数の限度を1日2試合までとする制限を設けている。
日本臨床スポーツ医学会の提言。
投球制限
小学生は 1日50球/週200球以下
中学生は 1日70球/週350球以下
高校生は 1日100球/週500球以下
投球禁止
炎症と関節腫脹が消退するまで投球を禁止する。その後、筋力増強、ストレッチ、投球フォームの矯正を行う。
内側側副靭帯の断裂や剥離骨折に対しては靭帯再建術を行う。
急性期を過ぎたら温熱療法を行う。
離断性骨軟骨炎の透亮期では投球禁止期間は6ヶ月から1年を要することが多い。
離断性骨軟骨炎で手術が必要な場合は、分離期では骨釘移植、遊離期では骨軟骨移植術を行う。
肋骨骨折
胸部外傷の中でもっとも多くみられる損傷。
重症な場合は、肺損傷などの内臓損傷を併発し気胸や血胸になる場合もあるので注意が必要。
年少者は肋骨が柔らかいため骨折しにくいが、高齢者は肋骨が柔軟性がなくなり、もろくなっているため骨折を起こしやすい。
好発部位は第4肋骨から第8肋骨で、特に第7肋骨に多い。それより上部の骨折は血管損傷を、それより下部の骨折は腹腔内臓器損傷を起こしやすい。
第11肋骨、第12肋骨は浮肋骨のため可動性があり骨折しにくい。 第1肋骨、第2肋骨は胸部の深部に位置し鎖骨、肩甲骨、肩甲帯筋肉に守られ
骨折しにくい。
直達外力によるものと介達外力によるものがある。直達外力の場合、骨折部の転位は胸郭内方凸の転位となる。介達外力の場合、胸郭外方凸の転位となる。
交通事故や転倒などによる大きな外力により発生することが多いが、高齢者は咳や腕を伸ばした動作をしただけで外力がかからなくても骨折することがある。
16歳以降のスポーツをしている方の場合は肋骨の疲労骨折を起こすこともある。
ゴルフや野球などは利き腕の逆の第5、第6肋骨に疲労骨折を発症しやすい。
■症状
骨折部位に一致した疼痛、圧痛、腫脹、皮下出血があり、咳や呼吸時の痛み、動作時痛、介達痛などがでる。
■診断
レントゲンや超音波画像診断により診断は可能。軽度の骨折であったり
によってはレントゲンに異常が認められないこともある。
また、肋軟骨部の損傷もレントゲンでは分からない。
■治療
バストバンドなどで胸部の圧迫固定
安静にしていれば3週間ほどで改善される。